研究室ウェブを訪問頂いた皆さんへのメッセージ

大学生の皆さんへ

吉田研究室のウェブ訪問ありがとうございます。吉田研は工学部高分子・有機材料工学科、大学院有機材料システム専攻の研究室で、電気化学の手法を使った機能性薄膜材料の創出と、それらを使ったエネルギー変換や貯蔵のためのシステムを研究しています。

人類の活動による温室効果ガスの排出による地球規模の気候変動は、私たちの未来に重大な悪影響をもたらしています。その気候変動を抑制し、持続可能な幸せの基盤を得るには、再生可能エネルギーの大幅な利用拡大、再生可能エネルギー100%の社会を可能な限り早期に実現することが大切です。

太陽光発電や風力発電が最も安価な発電方式となった一方、気象条件に左右されるこれらの電力をいつでも使える基幹電力とするために、安全で安価な大量電力貯蔵を可能とする大規模蓄電池や貯蔵・輸送・オンデマンド利用が可能な化学燃料(グリーン燃料)への変換が重要となっています。我が国では地理的制約が大きく、施工費用が大部分を占める太陽光発電については、パネルの低価格化よりも超高効率化(同じ面積からより多くの電力が得られる)が求められます。そして、これらの再エネ技術が世界の全ての地域に普及し、誰もがアクセス出来、技術自体が持続するためには、希少な鉱物資源を用いないことや、製造にかかるエネルギーを低減することが重要です。

これらの課題に対して、電気化学は多様な解決手段を提供し得る学問分野です。電池や電解が電気化学的原理によることはもちろん、太陽電池に用いる材料も電気化学の手法で低エネルギーに生出すことが出来ます。電気化学は機能性薄膜材料合成⇒グリーン電力の創出⇒貯蔵⇒変換までの全てをカバーします。吉田研では、主に以下の4つのテーマに沿って研究を進めています。

  • 機能性薄膜材料の電解析出-原理の解明と構造機能評価
  • ホットキャリア抽出型超高効率太陽電池
  • 大規模蓄電に向けたレドックス蓄電池
  • グリーン水素製造のための水素結合性導電性高分子触媒の開発

それぞれの研究課題の詳細や関連する研究テーマの説明は「研究紹介」のページをご覧ください。

「人生100年時代」となり、今大学で学んでいる大学生の皆さんは、(戦争さえ無ければ)今後とても長い年月を生きることになります。その間、世界は変わり続け、今は想像することさえ出来ないことが起こり、夢のような技術も可能となっていることでしょう。それが幸せな世界であることを願ってやみません。そして、皆さんの次の世代、そのまた次の世代も幸せであるように、人類の時代が続くこと、幸福のリレーに貢献出来ることは、一度限りの人生を輝かしいものとするためにとても大切なことです。ところが、これまでの発展の歴史は、弱者からの搾取、不平等不公正さの上に成り立っていました。競争原理、勝者の論理の下で、持続性よりも効率が優先され、格差が拡大し続けました。その結果としてテロや戦争が起こり、多くの難民を生み、恨みと憎悪、分断と対立によって世界が著しく不安定化しています。「幸せな人生を生き、未来にそれを残すこと」は人類共通の目標であり、自分の都合に縛られず、多様性を受け入れ尊重し、世界の人々と協働出来ることが大切です。

吉田研では、グローバル人材の育成を最も大切なことと考えています。科学技術者の共通語である英語での高いコミュニケーション力を養うことはもちろん、世界の歴史と今を知り、不都合な真実にも向き合い、公正で持続可能な未来のために協働できる人材が求められます。吉田研では研究についてのセミナーだけでなく、様々な国際的社会問題とその背景について学び議論する場を形成し、世界に開かれた視野を持つ人材の育成に力を入れています。様々な国や地域からの留学生受け入れはもちろん、欧米との国際共同研究プロジェクトを通じて、多くの学生(博士課程は全員)が留学の機会を得ています。また、日本初となる米電気化学会(ECS)学生部会ECSYUや山形大学カーボンニュートラル研究センター学生部会TF-YUCaNなど、研究室の学生が主体となってセミナー等の企画運営も行い、国際社会や地域社会とつながる活動に取組んで、協働をリードする力を養っています。

企業の皆様へ

吉田研究室のウェブ訪問ありがとうございます。本研究室では電気化学的な手法による薄膜やナノ物質、無機/有機ハイブリッド材料などの新しい機能性材料の合成と、それを使った発電、蓄電、エネルギー変換(水電解、炭酸ガス還元、アンモニア電解合成などのグリーン燃料への変換)をテーマに研究を進めています。詳しくは、研究紹介のページや発表論文等をご参照下さい。

山形大学カーボンニュートラル研究センター(YUCaN)の中核研究室として、カーボンニュートラル社会への大変革に向けた山形地域からの発信にも取組んでいます。カーボンニュートラルで持続可能な社会の実現は、再生可能エネルギーの問題ではありません。それは重要ではありますが、それだけではないのです。社会の全てのセクターから様々にアプローチし、協働協業することが大切です。山形は自然環境豊かで、おいしい農産物に恵まれ、美しい山々と海、温泉や冬の豪雪という未来に必ず受け継ぐべき美しい日本が凝縮された地域です。時に厳しい自然環境の中で、持続可能な幸福を受け継いできた地域でもあります。「カーボンニュートラルの山形モデル」を発信したいと考えています。

再エネ関連の共同研究はもちろん、社会変革に向けたあらゆる協働、セミナーの開催など、地域の経済と暮らしを支える事業者の方々のお力になりたいと考えています。吉田司は、1990~2010年頃まで続いた色素増感型太陽電池の研究開発について、国のプロジェクト等により、産学連携を進めた経験を持ちます。その時に出来た人の縁は、今でも続いており、つながっていることの大切さをいつも意識しています。その色素増感型太陽電池は、結局のところ普及していません(将来は分かりませんが)。しかし、大切なのはお互いに未来志向で協働し、学びを進めて互いを高め合うことだろうと思います。吉田の考えとしては、大学は人材育成を主とした教育機関であり、その研究は公共性の高いものでなくてはならないと思っています。一過性のブームに踊らされることなく、自らの学問を高め、受け継いでいくことが大切です。国立大学の独立行政法人化と運営費交付金が年々減額されたことで、大学における研究教育環境はどんどん悪化しています。しかし、それを民間からの共同研究費等で補おうという考え方は間違っていると思います。大学は国民の宝であって欲しいと思いますし、それを支えて下さっているのは国民全員です。大学の研究教育に経済効果や効率を求めた結果が今の劣悪な大学環境を生んでしまったことを決して忘れないで欲しいと思います。

そして、その吉田も大学と社会に育てて頂いた一人です。多くの経験と学びを与えてもらいました。それはまだまだ続いています。次世代の育成や社会への貢献を通じてご恩返しをすることが、残り10年を切った今、一番大切なすべきことと思っています。お役に立てるのであれば、共同研究等に応えられる環境は常にあります。「話を聞きたい」だけでも全く構いません。YUCaNの他の先生方との仲介等もさせて頂きます。大学は常に国民と共にあることをこの場でお知らせし、それを実践したいと思います。どうぞお気軽にご相談ください。

高校生の皆さんへ

吉田研究室のウェブ訪問ありがとうございます。「大学ではどんな分野の勉強をして、どんな大人になりたいだろうか。」大学の研究室ウェブを訪問した皆さんは、きっとそんなことを考えたことでしょう。とても良いことです。何をしたら良いのかはよく分からないけど、ただ漠然と何かを待ったりはしたくない、一度きりの人生を目いっぱい生きたい。これから色々なことが起こると思いますが、是非そんな思いを大切にして、「なりたい自分」に向かって頑張って欲しいと思います。

しかし、なりたい自分はどうしたら見つかるのでしょうか?「やりたいことが見つかれば頑張れるのに。でも、自分に何が出来るのか分からないし、何がやりたいのかも分からない。」と学生から聞くことが多いです。でもそれって典型的な怠け者の言い訳です。順番が逆なんです。頑張ると、やりたいことが見つかる。知識や経験が乏しいのに、やりたいことが見つかるなんてことはありません。親子、友人、恋愛、人との関係を通じて自分という人間が理解できるようになります。人付き合いを避けていたら自分がどんな人であるのかも分かりません。研究も好きか嫌いかではないのです。やったこともないのに、好きも嫌いもないでしょう?出会いを大切にして、一生懸命になってみること、頑張ってみること、これが大切です。きっかけは偶然でも、誰かに与えられたものでも、何でも良いんです。目の前のことに向き合い、一生懸命になってみる。自分としては大変なチャレンジを乗り越えた時、「あの時は大変だったけど、なんだか充実していた。ひょっとして、自分はああいうの好きかも。」というのが見えてきます。それが理科の勉強だったら、あなたはきっと理科が好きになります。それがあなた自身の選択になります。「好き」とは言えなくても「大切なもの」には必ずなります。自分が一生懸命頑張ったことの結果がどうでも良いこと、であるはずがありません。頑張った分だけ、大切になるんです。それから、「自分に何が出来るか」という考え方も不要です。自分で自分が分からない頃は、周囲の期待に応えることが目標になりがちです。成績が勉強の目標になってしまうし、他の人より優っているか、劣っているかがとても気になります。先生に褒められると「自分はイケてる」と誤解し、逆に叱られるのを極端に嫌がります。そういうのを他律状態と言います。大切なのは自分を超えること、まだ会ったことのない、会いたい自分に会うために頑張るんです。

自分と同じような価値観を持った人に囲まれて、居心地の良い場所にずっといたら、他律状態を脱することは出来ません。その中でより強い立場にいる人の都合や期待に自分を合わせることが目標になり、それが上手に出来ないと、苦しくて、居心地が悪くなります。でも、飛び出す勇気は無いから、自分を値下げすることでバランスを取ります。人生は一度なのだから、自分を取り巻くComfort Zoneから飛び出す勇気を持って下さい。世界は広く、人生は長いのです。多くのことを知り、経験すると、自分が見えてきます。居心地が悪い世界に飛び込むと、居心地を良くしようともがき苦しみ、努力し、成長します。うんと大変な目に遭ってください。あなたが素敵な人になれば、他の素敵な人と互いをマグネットの様に引き寄せ合い、大切な仲間が得られます。(日本人の同年代、ではなくて、世界中の多様な仲間が!)気づいたら、何の迷いもなく「これが私の理想、目標!」と言えるようになっていることでしょう(自律状態です)。急いでも良いけど、慌てないで、焦らないで。すぐに手に入ることはすぐに消えてなくなります。時間をかけて苦労した分だけ、価値が高まり、ブレない人生の目標に近づいていくことが出来ます。

話を研究のことに結び付けたいと思います。吉田研では、持続可能な人類の幸福のために、その基盤となる再生可能エネルギーを研究していますが、学べば学ぶほど、気候変動は技術だけで解決出来ることではないと分かってきます。科学技術を含む人類の文化的発展と戦争の歴史、世界の多様性とグローバルな経済産業における不公正さや対立、これを放置した時に人類を襲う不幸を想像出来るようになると、科学技術を志す者として、どう生きるべきかという問いに真剣に向き合えるようになります。学び、気づき、想像する。持続しない成長(膨張)よりも、受け継ぎ、育て、残すことが本当の幸せだと気付くことでしょう。吉田研では電気化学に関する専門の勉強だけでなく、可能な限り色々な経験、特に国際的な経験を奨励支援しています。また、小中高校生向けに特別授業などの取組みもしています。オープンキャンパス等での研究室公開はもちろん、再エネ、気候変動、SDGs、英語学習のことなどの出前講義も行っていますから、ご希望の高校は山形大学工学部の広報室に問い合わせてください。

小中学生の皆さんへ

吉田研究室のウェブページ訪問ありがとうございます!大学の研究室に興味を持つのは感心です。吉田研究室は、電気化学という分野の研究室で、太陽電池、蓄電池、水素エネルギーなどの再生可能エネルギーを研究しています。

この研究室を訪問した皆さんは、二酸化炭素などの温室効果ガスが人間の活動によって大気中に増えて、そのために地球がどんどん暑くなる「地球温暖化」が問題になっていることを知っていますね?温暖化が進むと、山形で雪が降らなくなるとか、夏が暑くて熱中症の人が増えるとか、そういうことだけではないんです。一番心配なのは、食糧が足らなくなることです。日本は食料の60%以上、エネルギーの90%以上を海外からの輸入に頼っています。外国の土地と水を使って育てた農作物を、燃料を使って日本まで運んでいます。「国産」と書いてあるお肉や卵も、その動物が食べている餌はほとんどが輸入品です。米や野菜を作るのに必要な化学肥料も輸入品です。発電に必要な石炭や天然ガスも全部輸入品です。

日本でも大型台風や集中豪雨などの異常気象が起こっていますが、地球全体ではもっと大変なことが起こっています。洪水や干ばつ、山火事や海面上昇。水や食料が無くなって、自分が生れ育った地域を出ていかなくてはならなくなった気候難民が既に世界で1億人以上いるのです。日本のスーパーやコンビニの棚から食べ物が無くなる、あったとしてもパン1枚が1000円以上になるかも知れません。そして、もし食べ物をめぐって人々が争い始めたら、誰にも戦争を止めることは出来ません。食料やエネルギーがこれまで安く手に入ったのは、世界が平和だったからです。

温室効果ガスを出さない再生可能エネルギーを増やすことはもちろん大切ですが、日本だけいくらでもエネルギーが得られるようにして、今までどおりの生活をしたい、ということではありません。無駄遣いをやめて、物を大切に長く使うことや、個包装のお菓子をやめてゴミを減らすなど、生活のスタイルを変えて、みんなの幸せがずっと続く様にしなくてはなりません。世界のみんなと仲良くすることは、日本にとって絶対に必要なことなのです。

吉田先生は、米沢市だけでなくて、山形県内各地の小中学校で、地球温暖化、再生可能エネルギー、SDGs、カーボンニュートラルについての特別授業を行っています。技術のことだけでなくて、何故こんなことが起こってしまったのか、今世界で何が起こっているのか、このまま何もしないとどうなってしまうのか、そして未来のために私たちが出来ることは何か、についてお話しています。小学生高学年と中学生が対象です。「是非私たちの学校に来て!」と思った人は、先生に相談してみてください。先生が山形大学に連絡してくれます。

市民の皆様へ

吉田研究室のウェブ訪問ありがとうございます。研究室主宰の吉田司は、太陽光発電、蓄電池、水素エネルギーなどの再生可能エネルギー関連の研究に30年以上のキャリアを費やしてきました。地球規模気候変動の深刻な悪影響が露わになり、2050年までのカーボンニュートラル実現は人類社会が持続可能であるために必須であるという認識が広まっています。
しかし、人類が何故この様な状況に陥ったのか、私たちが辿ってきた道のりを振り返り、貧しい国々から搾取することで得た豊かさであることを知ると、カーボンニュートラルが技術革新だけでは絶対に達成できないと分かります。政治家や研究者が問題を解決できるわけではなく、主役は一人一人であって、社会の全てのセクターが協働し、持続可能な仕組みへの大変革を成し遂げる必要があるのです。
山形県や県内自治体の支援により、関心のある一般の方に向けた講演会を頻繁に行い、これまでと今、そしてこれから私たちがすべきことについてお話させて頂いています。不都合な真実に向き合い、持続可能な社会への大変革をこの山形の地から起こしていきましょう!営利目的でなければ講演費用などは頂いておりません。場所のご準備と人を集めて頂ければ時間のある限り参ります。但し、山形大学の許可を得て講演活動を行っておりますので、ご希望される団体等につきましては講演依頼を工学部の広報室に頂ければと思います。